これは、5分間の短い動画で、セラピードッグとそのハンドラー(飼い主)が穏やかな語りとともに犬と過ごす様子を記録したものです。
ハンドラーは、視聴者に向かって「最近、調子はどうですか?」と問いかけたり、犬の毛並みや好きな撫で方について語ったり、視聴者に自分がセラピードッグを撫でているところを想像するよう勧めたりしながら、まるで本当にそこに犬がいるかのような臨場感を演出します。
視聴実験は2つのグループで行われました。
1つ目は大学生963名(平均年齢21歳)、2つ目は一般成人122名(平均年齢41歳)です。
どちらも動画視聴前後に、5段階のストレス自己評価(VAS)を実施し、動画の効果を検証しました。
セラピードッグの5分の動画がストレスを低下させると判明
実験の結果、学生のストレススコアは3.33から2.53へと低下し、確かな効果が確認されました。
また一般成人のスコアも3.07から2.43へと下がり、中程度の効果が示されました。
さらに、女性の方が男性よりもストレス低下の度合いが高かったという結果も得られました。
視聴前の時点で女性のストレススコアは男性より高かったものの、動画視聴後、男女のストレススコアには統計的な有意差が見られなくなったのです。
このように、実際にセラピードッグに接することができなくても、その動画を見るだけでストレスを軽減させることができると判明しました。

もちろん、この研究にはいくつかの限界があります。
元研究では他の動画(自然風景や動物以外の映像)との比較検証は行われていません。
また測定は即時的なものであり、長期的効果は未確認です。
さらに参加者の多くが女性(学生の80パーセント、一般の72パーセント)で、男女差の分析には偏りがある可能性があります。
それでも、今回の結果はメンタルヘルス支援の新しい可能性を開いたと言えるでしょう。