そこで研究チームは、体内の水分量を、いつでも・どこでも・手軽に測定できる方法の開発に乗り出しました。
着目したのが、生体インピーダンス法という技術です。
これは、体にごく微弱な電流を流し、組織の電気抵抗(インピーダンス)を測定するというものです。
ここで重要なのは、水は電気を通しやすいという性質です。
体内の水分が多ければ電流はスムーズに流れますが、水分が不足すると、組織の電気抵抗が高くなる傾向があります。
つまり、組織の電気の流れにくさを測定すれば、体の水分状態がわかるというわけです。
研究チームが開発したセンサーは、二の腕に貼り付けるタイプの小型軽量な装置で、バッテリー駆動となっています。
センサーが微弱な電流を腕に流し、その流れにくさ(インピーダンス)を測定します。
測定データは無線通信によってスマホに送信され、リアルタイムで水分状態がアプリに表示される仕組みです。
このセンサーの利点は、体を傷つけない非侵襲的な構造でありながら、連続的な測定が可能であることです。
ユーザーが何をしていても、水分状態を常にモニタリングできるという点で、これまでの水分管理手段を大きく上回っています。
センサーが知らせる水分補給が「炎天下で働く人の命を守る」
研究チームは、このセンサーが本当に使い物になるのかを確かめるために、2種類の検証実験を行いました。
1つ目は、被験者に利尿剤を投与して意図的に脱水状態を作り出すテストです。
この状態で、尿サンプルを採取し、尿中の浸透圧や比重など脱水の生化学的指標と、センサーの測定値とを比較しました。
その結果、上腕のインピーダンス変化と尿マーカーとの間に高い相関関係が確認され、センサーが体全体の水分変化を的確に反映していることが明らかになりました。
2つ目は、24時間の自由行動下での測定試験です。
被験者には通常通りの日常生活(歩行・作業・軽い運動など)を送ってもらい、その中で水分変化を継続的に記録しました。