鳥栖戦に3-4-2-1のフォーメーションで挑んだ札幌は、自陣での守備時には両WBが下がり、5バックに陣形をチェンジ。DF西野、DF宮大樹、DF浦上仁騎、MF原康介、DF髙尾らが構築した可変的な5バックは、絶妙な距離感で相手に自由を許さなかった。鳥栖がアタッキングサードに侵入したボールホルダーには、札幌DF陣がマンツーマン気味に対応していた。特に髙尾、西野、浦上の巧みなポジショニングがスリヴカを封じ込める要素となった。

自由を奪われたスリヴカは、思うようにプレー出来ずフラストレーションを溜め、後半35分にピッチから退いた。


宮大樹 写真:Getty Images

攻守両面で光った宮大樹の活躍

この試合で攻守にわたって存在感を示したのがDF宮だ。守備ではリスクマネジメントを徹底し、相手を潰すべき場面では確実に潰し、空中戦でも制空権を掌握。こうしたプレーが札幌の守備を支えていた。攻撃面でも起点となり、相手DFラインの背後を狙うパスや左サイドの前線へ送るロングボールなどで札幌のチャンスを演出。攻守両面で見せ場を作る大車輪の活躍だった。

リスク管理能力に長け、球際でも強さを発揮できる選手が1人いるだけで、チームの守備は各段に安定する。

髙尾瑠 写真:Getty Images

守備の安定化に髙尾あり

前述の通り、直近は主に4バックで戦うことが多かった札幌は、この試合に3バックで挑んでいる。左サイド攻撃が特徴の鳥栖を意識した布陣だろう。

鳥栖のボール保持時には、札幌の両WBが下りて5バックを形成。その結果、サイドの裏をしっかりとケアすることに成功した。なかでも、髙尾の絶妙なポジショニングが大きな要因だったと言える。

髙尾の右WBとしての貢献は守備だけにとどまらない。77分には、センターサークル付近でボールを持つと、左WBで途中出場していたMF田中宏武へサイドチェンジのパスを供給。このパスを受けた田中は、バックスピンのかかったクロスをゴール前へ送る。これを鳥栖GK泉森涼太がファンブル(※)し、こぼれ球を札幌MF荒野拓馬がすかさず流し込んで先制点を挙げており、鳥栖の時間帯が続いていた中でも、髙尾の右足が決勝点の起点となった。