昔から、畑に鳥を寄せ付けないために「かかし」が活躍してきました。
しかし、もしこの「かかし」が機動力を備えたロボットになったとしたら?
そんな未来的な存在が、アメリカ軍の空港で実際に活躍を始めています。
アメリカ陸軍工学研究開発センター(ERDC)は、アメリカ農務省・国立野生動物研究センター(USDA NWRC)と共同で、ロボット・コヨーテを開発しました。
目的は、軍用飛行場から鳥や野生動物を遠ざけること。
しかもその姿は、どこか可愛らしさも感じさせる“サイボーグ獣”なのです。
目次
- 空港に迫る野生動物たちの脅威
- 野生動物を追い払う時速32kmの高速「ロボット・コヨーテ」
空港に迫る野生動物たちの脅威
飛行場の滑走路や周辺施設には、私たちの想像以上に多くの野生動物がやってきます。
特に大きな問題となるのが、鳥による衝突事故、いわゆる「バードストライク」です。
飛行機のエンジンに鳥が吸い込まれると、最悪の場合はエンジン停止に至ることもあります。
また、風防への衝突や機体の翼や尾翼への損傷なども大きなリスクです。
軍用飛行機の場合、時速数百キロで飛行中に小鳥がぶつかるだけでも致命的なダメージとなりかねません。

実際、過去にはバードストライクによってジェットエンジンが停止し、緊急着陸したケースも報告されています。
そして鳥類による被害に加え、ウサギやシカなどもトラブルをトラブルを引き起こします。
そのような野生動物は滑走路に侵入したり、餌を探したり、穴を掘ったり、巣を作ったり、排泄したりするのです。
こうした問題を解決するために、空港ではさまざまな対策が試みられてきました。
たとえば、ガス砲やスピーカーで大音量を鳴らして威嚇する方法があります。
一定の効果はありますが、動物たちは次第に音に慣れてしまい、再び戻ってくるようになります。