昔から、畑に鳥を寄せ付けないために「かかし」が活躍してきました。

しかし、もしこの「かかし」が機動力を備えたロボットになったとしたら?

そんな未来的な存在が、アメリカ軍の空港で実際に活躍を始めています。

アメリカ陸軍工学研究開発センター(ERDC)は、アメリカ農務省・国立野生動物研究センター(USDA NWRC)と共同で、ロボット・コヨーテを開発しました。

目的は、軍用飛行場から鳥や野生動物を遠ざけること。

しかもその姿は、どこか可愛らしさも感じさせる“サイボーグ獣”なのです。

目次

  • 空港に迫る野生動物たちの脅威
  • 野生動物を追い払う時速32kmの高速「ロボット・コヨーテ」

空港に迫る野生動物たちの脅威

飛行場の滑走路や周辺施設には、私たちの想像以上に多くの野生動物がやってきます。

特に大きな問題となるのが、鳥による衝突事故、いわゆる「バードストライク」です。

飛行機のエンジンに鳥が吸い込まれると、最悪の場合はエンジン停止に至ることもあります。

また、風防への衝突や機体の翼や尾翼への損傷なども大きなリスクです。

軍用飛行機の場合、時速数百キロで飛行中に小鳥がぶつかるだけでも致命的なダメージとなりかねません。

画像
バードストライクで破損したF-16の風防 / Credit:Wikipedia Commons

実際、過去にはバードストライクによってジェットエンジンが停止し、緊急着陸したケースも報告されています。

そして鳥類による被害に加え、ウサギやシカなどもトラブルをトラブルを引き起こします。

そのような野生動物は滑走路に侵入したり、餌を探したり、穴を掘ったり、巣を作ったり、排泄したりするのです。

こうした問題を解決するために、空港ではさまざまな対策が試みられてきました。

たとえば、ガス砲やスピーカーで大音量を鳴らして威嚇する方法があります。

一定の効果はありますが、動物たちは次第に音に慣れてしまい、再び戻ってくるようになります。