メッセージを打つ前に考える時間があり、言い直せます。
絵文字で感情を柔らかく表現することさえできます。
これは、若者にとって「安心して感情を伝える手段」であり、「自己表現のコントロールが可能な環境」なのです。
16歳のメディさんも次のようにコメントしています。
「父親から電話がかかってきても、正直気が重い。
質問攻めにあうのがわかっているから、終わった後にLINEで返信する」
これは父親を嫌っているわけではなく、自分の感情リソースを守りながらコミュニケーションしたいという意思表示にほかなりません。
こうしたコメントから分かるのは、若者にとって電話を取らないのは、「無関心」でも「反抗」でもないということです。
むしろ「適切なタイミングで、適切な形でつながりたい」という、極めて繊細な人間関係のマネジメントなのです。
では、世代間の感覚のズレをどのように調整できるでしょうか。
電話に出ないことはマナーの欠如か? それとも新しいコミュニケーションの形か?

「電話に出ないなんて失礼だ」と感じるのは、電話が礼儀正しく、親密なコミュニケーション手段とされていた時代を生きた世代の感覚です。
もちろん今でも「メールで済ますのではなく、電話することが礼儀だ」と感じている人は多いでしょう。
しかし、若者にとっては、逆に「いきなり電話をかけること」がデジタルエチケット違反と見なされることすらあります。
ある若者はこう言います。
「友達に電話したいときは、まずはメッセンジャーで“今話せる?”って聞くのが普通です。
それをしないと、相手の気持ちを無視した感じになります」
電話は今や「事前確認が必要な特別な行為」になっているのです。
コルディエ氏によると、こうした考えや行動は、デジタル社会における新たなマナーの登場を示唆しているようです。