交尾中に攻撃的なメスとの物理的な距離を保つために長い生殖器が役立つのです。

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Satyrex ferox。長い触肢でメスに共食いされるのを防ぐ / Credit:Pavel Just_EurekAlert

実際、S. ferox のメスは非常に攻撃的で、少しの刺激でも前脚を上げて威嚇姿勢を取り、足の付け根の毛を擦り合わせて「シューッ」という威嚇音を出します。

このような環境では、オスは近づくほどに危険です。

だからこそ、この異様に長い「愛の腕」は、”できるだけ遠くから交尾したい”というオスの願いをかなえるものとなっています。

交尾のための戦略は様々であり、羽根を派手に広げる鳥や、美声を持つカエルなどが有名です。

Satyrexのように「死なずに交尾するための形質」は、非常にユニークで興味深い例だと言えます。

私たち人間も、恋愛や子育てに多くのエネルギーを割いて生きていますが、タランチュラの世界では、それが文字通り「命がけ」です。

子孫を残すために、愛の腕を伸ばして命を賭けるクモたち

その「必死な姿勢」から、私たちも何かを学べるかもしれません。

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参考文献

Spider’s record-breaking “love arm” ensures safe sex from afar
https://newatlas.com/biology/spiders-palp-mating/

New tarantula species so feisty, males evolved the longest genitalia to survive mating
https://www.eurekalert.org/news-releases/1093326

元論文

Size matters: a new genus of tarantula with the longest male palps, and an integrative revision of Monocentropus Pocock, 1897 (Araneae, Theraphosidae, Eumenophorinae)
https://doi.org/10.3897/zookeys.1247.162886