黒坂岳央です。
昨今、「AIが人間の仕事を奪い、やがてすべての仕事が消える」「労働が贅沢品になる」といった意見が散見される。果たして本当にそうだろうか。筆者の立場は明確である。それは「否」だ。
もちろん、未来のことは誰にもわからないし、筆者も予言者ではない。しかし、少なくともこの原稿を執筆している時点では、本質的にAIは人間の「仕事」ではなく「労働」を奪っているのが現状だと認識している。

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労働と仕事の違い
まずはこの2つの概念をはっきりと区別しておきたい。
労働(labor):単調で反復的、定型的な作業。AIが得意とする領域。 例:誤字脱字の訂正、文字起こし、データ入力、検索業務。 仕事(work):創造性、判断力、人間関係、責任が伴う行為。 AIでは代替困難な領域。例:戦略の構築、顧客との交渉、倫理的判断。
筆者自身の業務でも、AIは日常的に活用している。たとえば原稿執筆においては、誤字脱字のチェック、論理整合性の確認、リサーチの補助などを担わせている。その結果、手元に残るのは「考える」「決断する」「伝える」という本質的な仕事である。
そして他の仕事も同じように「補助的、深堀り的な活用法」をすることで飛躍的に労働生産性は高まった。AIを使い始めるようになってから、浮いた時間で新しい仕事や勉強をしている。2025年になってからも新規の仕事を始めることができたのは、市場調査などの補助をやってくれたからで、AIなしには実現し得なかった。そう考えると「AIが生み出した仕事」といえる。
AIは筆者の「労働」を代替しているが、「仕事」は増えたのだ。今後、AIが代替する範囲はもちろん広がるだろうが、仕事そのものは人間が創出するだろう(繰り返しだが未来のことは誰にもわからない前提であり、少なくとも当面の間は)。
歴史を振り返れば未来が見える
AIによる雇用不安は決して新しい現象ではない。過去にも同様の恐れが繰り返されてきた。