一方、「J2にいるのは一時的」という思考から離れられないJ1経験クラブの運営戦略は、過渡的なものに留まり強化も一貫性を欠くため昇格が遠のく。J2に降格した際「1年でのJ1復帰」を目標に掲げるクラブが多いのもその象徴だ。

J2特有の戦い方と“J2力”の軽視
J2は、J1とは全く異なる戦い方を求められるリーグだ。長距離移動に過密スケジュール、判定基準の違いなど過酷な環境の中で毎週末タフな試合をこなす。そこで問われるのは「勝ち点1を拾えるか」「90分間の集中力を保てるか」などの現実的な力、いわゆる“J2力”だ。
J1基準の「ポゼッション重視」や「理想的なビルドアップ」にこだわりすぎるとJ2では勝ちきれない。実際に2024シーズンのロアッソ熊本は、スタイルを貫きながらも終盤に失速している。また、2023シーズンの町田ゼルビアのように、割り切った守備と球際の強さで昇格を果たしたクラブもある。
このように、“J2沼”を抜け出すには、“J2力”を真正面から受け止め、スタイルと勝負の両立を図る必要がある。プライドや理想だけで泥臭いリーグを生き抜くことはできない。
J2に長く留まるクラブには共通する要素がいくつもある。過去の栄光に縛られた補強、経営の戦略不足、リーグ特性への理解欠如、そして心理的な焦り。J1を経験したがゆえに抜け出せない 、そんな皮肉すら感じさせる構造こそが“J2沼”の本質なのかもしれない。
環境や立場に応じた現実的な運営と、J2ならではの戦い方を確立できれば、そこから抜け出す道はきっとある。重要なのは過去にしがみつくことではなく「J2で戦っている」という現実を受け入れ、状況に沿った正しい戦略を立てることだ。