水のpHの低下により、サンゴ礁の石灰化率が低下する懸念があります。しかし、サンゴ礁は既にpHの大きな変動に耐えています。その変動の一部は、礁内の日中の光合成活動に起因しています。測定されたpH値は、日中は9.4から夜間に7.5まで変動しています(Revelle and Fairbridge, 1957)。De’athら(2009)は、オーストラリアのグレートバリアリーフ(GBR、世界最大のサンゴ礁生態系)の一部の地域で、1990年以降、石灰化率が14%減少したと報告しました。これは、水温の上昇とpHの低下に起因するものと仮定されました。しかし、Riddら(2013)は、その報告が偏ったデータ分析に基づくもので、修正後には石灰化率に変化がないことを示しました。それでも、元の論文が引き起こした警鐘は、元の研究への引用数(541件)が修正論文への引用数(11件)を大幅に上回る(2025年4月30日現在)ことからも、依然として継続しています。
ビジネス
2025/08/10
米国の気候作業部会報告を読む③:海洋酸性化…ではなく海洋中性化
サンゴの石灰化率が減少すると、殻が作れなくなるので、サンゴが発達しなくなる訳だが、観測によれば日々のpHの変動は「海洋中和化」よりも桁違いに大きい。そして、石灰化率が下がると言う論文には問題があったということだ。
オーストラリア海洋科学研究所(AIMS)の最新の年間報告書によると、サンゴの被覆は大幅に回復しています(AIMS, 2023)。図2.4は、AIMSの調査結果をサンゴ礁面積の割合で示した硬質サンゴ被覆率を示しています。2011年以前のグレートバリアリーフの減少の大部分は、激しい熱帯サイクロン活動(Beeden et al., 2015)に加え、海洋熱波、農業排水、外来種の影響によるものでした(Woods Hole, 2023)。1990年から2009年までのGBRの石灰化減少と、大気中のCO₂濃度の継続的な増加を考慮すると、回復は一部の観察者を驚かせました。

図2.4 グレートバリアリーフの3地域における硬質サンゴ被覆率(1985年から2023年)出典:AIMS 2023。
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