もちろん、「誰が言うか」ということを初期フィルターとして利用するのは決して悪いことではない。たとえば医師の意見をネットの素人の意見より重視するのは自然であり合理的だ。しかし、そこで思考を停止させず、「本当にそうなのか?」「自分の状況に合うのか?」と一歩立ち止まって考える姿勢が重要だ。
この話で検証を使うとすれば、セカンドオピニオンである。実際、専門家の間でも意見が分かれることは少なくない。健康情報は医師の間でも議論がわかれ、税務については税務調査官や税理士の間でも見解が分かれることがある。そんな時、一人の言う事を鵜呑みにせず、複数人の見解を分析し、「自分にとって」必要な意見が何かを検証するというわけだ。
今ならAIが活用できる。筆者は専門家から意見や提案があった場合、自分が真に深く理解できるまでしつこく検証する。「なんでもかんでも疑ってかかれ」とは言わないが、ろくに理解していないのに「先生の言うことだから…」と無批判に受け入れるのは問題だ。
最低限、専門家の意見や提案をしっかり理解でき、反証を想定しても納得の行くところまで理解度を高める努力は必要だろう。AIはまさにそのような検証作業で大きな力を発揮する。
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情報過多の現代において、最も重要なスキルは「検証する力」である。この力を持てば、有名人でもAIでも、「これは正しいが、自分には当てはまらない」「こちらの情報は信頼できる」と正しく選別できるようになる。情報に振り回されず、自分にとって最良の選択を下すためには、誰かに頼り切るのではなく、自分自身で考える習慣を身につけることが何よりも重要なのだ。
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