コルチデ氏の著書を紹介したオーストリア国営放送(ORF)のイレネ・クリセン記者は「コルチデ氏の著書は、コーランへの歴史批評的な取り組みを訴え、イスラム教とユダヤ教の建設的な対話に貢献しようとする試みだ。コルチデ氏は、イスラエル、アラブ首長国連邦(UAE)、バーレーンが米国の協力を得て策定した多国間協定であるアブラハム合意を、肯定的な実践例として挙げている」と指摘。そして「イスラム教徒には、ユダヤ人の生活を容認するだけでなく、それを自らの宗教的存在の一部として守り、促進するという倫理的・神学的義務が生まれる肯定的なグランド・ナラティブのビジョンを描こうとしている」と説明している。

ちなみに、アブラハム合意とは、2020年9月15日にイスラエルとUAEおよびバーレーンが国交正常化のために署名した一連の和平合意だ。2020年11月にはスーダン、2023年10月にはモロッコも同合意に参加した。また、2023年にはUAEの首都アブダビで通称「アブラハムファミリーハウス」が公開された。同ハウスはアブラハムから派生した3宗教、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教の礼拝場、シナゴーグ(ユダヤ会堂)、教会、そしてイスラム寺院(モスク)を単に独立した宗教施設ではなく、大きな敷地の中に統合し、会議やイベントのための「共通教育センター」を備えている。

パレスチナ国家承認を検討し始めた英仏首相 マクロン大統領インスタグラムより

編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2025年8月3日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。