またグローバル経済という言葉がまだ使えるなら日本よりより高い時給の国で生産されたものは一般論として日本よりも高い金額になりやすいのです。たとえばポルシェやBMWが高いのは性能よりも製造コストの問題がはるかに大きいのですが、それをステータスとして喜んで買う人がいるだけの話です。

時給が上がると国内経済が潤いやすいことは事実です。消費増⇒企業収益増⇒法人税や個人所得税など増⇒財務省ハッピー というシナリオです。

日本の消費は既に成熟していないか、という議論ですが、60歳代から上の方の消費=モノを買うというスタイルからコト消費に変わっていることがキーワードです。推し活で新幹線に乗り、その地に宿泊し、ローカルフードも消費するといった一連の流れでは手元にモノは何も残らず、体験だけが残るのです。

では企業側の立場で見るとどうでしょうか?2000年代初頭、カナダ、アメリカで急激な最低時給引き上げが連鎖反応的に起きました。カナダの場合、州ごとに最低時給は決まるのですが、州と州のギャップを埋めるように各州で激しい上昇が生じ、私ども経営者としては商品価格の値上げと共にスタッフを絞り込む両面作戦を展開せざるをえませんでした。その結果、職がない人が増えた一方、仕事をしないで暮らす人も増えたのが事実です。アルバイト的なつなぎだけで生活する人、特に親からの不動産などの遺産がある場合、働くことを辞めるのです。いかついガタイの入れ墨のお兄さんがかわいい子犬を日中散歩させていたりすると違和感満載です。大学を卒業したけれど…という一流大学卒、職業ナシなんて普通になってしまったのです。

現代のAIの進化は究極の効率化ですし、AIに隠れてあまり話題になりませんが、ヒューマノイド型ロボットが加速度的普及をするまであと数年程度だと思います。また割と安いのが特徴でどんな機能を持たせるか次第ですが、中国製なら一体100万円を切る水準からあり大衆自動車並みの金額と言ってよいでしょう。つまりロボットが職を奪うのは目に見えており、その時、労働者は何処に追い込まれるかという心配の方が先になると思います。