読売の記事には「退陣する意向を固め、周辺に伝えた。月内にも表明する」とあります。石破首相は再び、記者団に「そんなことはない。続投する」と明言しました。「退陣の意向」とささやく情報があったことは否定できなくても、「退陣する意向を固めた」、「周辺に伝えた」まで踏み込んだのは、誤報だったような気がします。「月内にも表明」は翌日朝刊で「近く表明する意向」と書き換えられていました。

ばつの悪を自ら感じたのでしょうか。24日朝刊では解説特集で「退陣『まだ言えぬ』、首相が意向」という見出しをとり、「退陣は決意している。今は言えないだけ」という記事を書き、「第一報は間違いではない」といいたかったのでしょう。さらに29日の社説「首相は党の信頼失墜を望むのか」で「首相はすでに退陣の意向を固めている。ただ、表明する時期は決めていないという」と書きました。「石破降し」の圧力が強まる一方なのに、「続投する」と本人は言い続けています。「すでに退陣の意向を固めている」は、ファクトチェックで検証した方がいいと思います。

関税協議の決着については「日本にとって容認できる」、「近く退陣する首相にとって大きな実績となろう」(24日)と評価しています。関税協議は評価できるどころか、合意文書もなく、国際貿易史上、前代未聞の強引な一方的な押し付けだと私は思います。

日経社説(24日)は「国際ルールに基づかないトランプ関税は一片の道理もない。『私の指示のもとに、日本は米国に80兆円投資し、利益の90%を米国が受け取る』(トランプ氏の投稿)は、一方的な発表で、外交儀礼上も容認できない」と、酷評しています。日本政府はトランプ氏の無礼な態度を我慢して、交渉を収拾することに優先したのでしょう。だからこそ第三者のメディアが正論を主張すべきなのです。

朝日新聞はどうかというと、「自ら掲げた目標を達成できなかったのだから、職を辞すのが筋だろう」(21日)、「首相は改めて続投の意向を表明した。このまま政権に居座ることは民意に沿うものといえまい」(22日)と書きました。やはり一国の首相の進退については、決定的なタイミングがくるまでは「けじめをつけるべきだ」、「辞任は不可避の情勢だ」といった表現にしておくべきでしょう。