前任者よりも操りやすく、「農業改革」風を演出しやすい小泉氏の登場は、官僚にとって朗報だった。
統計部長はすぐさま動き、小泉農相に「作況指数の廃止」と「衛星・AIを用いた新調査への見直し」を発表させた。
作況調査の誤りを有耶無耶(うやむや)にしたまま、“改革路線”を装うことに成功した格好だ。
原因調査も「責任回避」で着地
さらに、コメ高騰の要因や農水省の対応を検証する調査を「大臣肝煎り」風に立ち上げた。7月29日は発表した結論は、省の責任を回避できる内容に着地させた。
調査担当者に電話取材したところ、コメ高騰の最大要因として「流通ルートの多様化」、とくに「農家の直売増加」を挙げた。
その主因は、2025年・2026年の2年連続の不作による供給不足だが、農水省はいまだにその基本すら認めようとしない。
この期に及んで「農家の直売が増えたせい」とコメ農家に責任転嫁する。
作況指数「101」で平年並みとした公式発表の建前を崩せず、誤りを認められない官僚の体面維持が優先されているのだ。
7月30日の食糧部会でも、問題の本質を覆い隠したままだ。
小泉農相に「需給変動に対応可能な増産体制へ」と改革風な発言をさせるなど、増産をキーワードに新たな“コメ不足解消”ストーリーへと世論誘導を開始した。
“自作自演”の濡れ衣を、なかったことに
コメ高騰原因と農水省の対応検証調査の結果としては、農水省は「コメの目詰まりは確認されなかった」と総括し、あたかも中立の立場から誤解を解いたかのように装った。
だが、“消えたコメ”疑惑に端を発した「流通の目詰まり」説そのものが、もともと農水省自身の誘導によって生まれた“自作自演”である。
そのうえで小泉農相に「見直すべきは見直す」と発言させ、反省のポーズだけで体裁を整えた。コメ高騰の犯人扱いをしてきたコメ業界への謝罪もその責任の所在も曖昧にしたままだ。
これがコメ高騰問題の農水省の対応に関する検証結果である。