そのため、商船護衛やシーレーン防衛は後回しにされ、通商破壊戦の重要性を軽視した。潜水艦も主に艦隊決戦の補助的役割に位置付けられ、通商破壊用への本格的転用が遅れた。結局、太平洋では艦隊決戦は起きなかった。

② 対潜戦・海上護衛の認識不足と準備不足

米潜水艦の能力を過小評価し、初期には輸送船に護衛をつけず単独航行を続けた。その後も護衛艦や護衛空母の数・性能が不足し、新型海防艦も低速・装備不足で潜水艦捕捉・攻撃が十分でなかった。戦争末期には、米潜水艦は巧みな「群狼戦法」を使用して、日本の輸送船に大打撃を与えるようになったが、それに対応できる戦術的ノウハウや対潜技術開発が未整備だった。

③ 情報戦(暗号解読)への無関心・危機意識の欠如

米軍は日本の海上護衛通信を解読し、船団の航路や位置を掌握していた。日本海軍はこれに気づかず、暗号の改変や対策を怠った。米潜水艦は、日本の輸送船団の動向について情報の共有化ができていたため、事前に待ち伏せの準備ができ、会敵率が高まり、輸送船被害が急増した。

④ 運用の硬直性と組織的欠陥

軍令部内部で護衛強化への反対意見や、資源不足による護衛能力割り振り不足があった。専門的な対潜戦研究・情報収集・統計分析が不十分で、実態把握も遅れた。

⑤ 物資・人員不足と戦時資源配分の歪み

当初の船舶損失の見積もりが甘く、日本の造船能力では損失を補填できなかった。民需用船舶の過剰な徴用で経済全体が疲弊し、継戦能力に悪影響を及ぼした。

哨戒艦の増強と国際協調

中国の海軍力の大幅な増強と尖閣諸島をめぐる争いなどを受けて、日本の海上自衛隊は、「かが」「いずも」の空母改修を経るなど、海軍力の強化と再編成を行っている。また日本は、中国と南沙諸島をめぐって係争中のフィリピンを準軍事同盟国と見なし、レーダーを輸出したほか、中古の護衛艦「あぶくま」型6隻を輸出する見込みである。

中でも、最近、海上自衛隊は、新艦種として哨戒艦(OPV:Offshore Patrol Vessel)を10隻建造する予定であり、それにはいくつかの重要な理由がある。

① 周辺海域の警戒監視強化