今回の件が一段落してから、国民生活センターのホームページで鍵交換に関する相談事例を調べてみた。そこで見つけたのは、想像以上に深刻な被害の数々だった。
法外な料金を請求されるケースは日常茶飯事。中には、簡単な作業なのに「特殊な技術が必要」と偽って高額請求をする業者もある。また、不要な追加工事を勧めて費用を釣り上げる手口も横行している。私が最初に遭遇した8万円という見積もりも、決して珍しいことではないのが現実だった。
特に深刻なのは、緊急時につけ込んだ悪質商法だ。鍵を失くして困っている消費者の心理に付け込み、冷静な判断ができない状況で契約を迫る。一度作業が始まってしまえば、途中で断ることは現実的に困難になる。
賢い消費者になるための実践的指針
私たちは日常生活の中で、様々な業者にサービスを依頼する機会がある。エアコンの修理、水道のトラブル、家電の設置など、専門技術を要する作業は専門家に任せるしかない。そんな時、今回の経験で学んだ判断基準が役立つはずだ。
情報化社会の恩恵で、私たちは多くの選択肢を手に入れた。しかし同時に、その中から本当に価値のあるものを選び抜く力も求められている。便利なツールに頼り切るのではなく、最終的には自分の目と耳で判断することの大切さを、今回改めて実感した。
もしあなたが鍵交換の必要に迫られた際は、この記事のことを思い出していただければ幸いだ。慌てず、しっかりと業者を見極めることで、きっと満足のいく結果を得ることができるだろう。
最後に、今回お忙しい中で丁寧かつ迅速に対応していただいたピース&セキュリティ・ジャパンのT坂さんに、改めて心からの感謝を申し上げたい。プロフェッショナルとしての仕事ぶりと、顧客に対する真摯な姿勢は、多くのサービス業者にとって手本となるものだった。
尾藤 克之(コラムニスト・著述家)
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22冊目の本を出版しました。
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