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帰宅したその日の夕方、ポケットに手を突っ込んで愕然とした。鍵がない。慌てて鞄の中を探し、今日立ち寄った場所を思い返したが、手がかりは見つからなかった。スペアキーを作っていなかった自分の不注意を悔やんでも後の祭り。選択肢は一つしかなかった。鍵を破壊して、新しいものに交換するしかない。
この予期せぬトラブルが、私に消費者として貴重な経験を与えてくれることになった。それは、サービス業界の光と影、そして本当に信頼できる業者を見極めることの重要性についての学びだった。
最初の衝撃──8万円という法外な見積もり
まずはインターネットで「鍵交換 業者」と検索し、上位に表示された中で口コミ評価が比較的良い鍵〇社に電話をかけた。「すぐに対応可能です」という心強い返事に安堵し、その日の夜に来てもらうことになった。
現地調査の結果、提示された見積もりは8万円。事前にネットで調べた相場感では1万円程度という情報が多かったため、あまりの開きに言葉を失った。「特殊な鍵だから」「夜間作業料金が含まれているから」と説明されたが、到底納得できる金額ではなかった。
こちらが躊躇していると、「今回に限り特別に」と4万円まで値引きするという。しかし、最初の見積もりが8万円だったのに、なぜ一気に半額まで下げられるのか。その根拠のない価格設定に、この業者への信頼は完全に失われた。丁重にお断りし、作業員の方には手ぶらで帰ってもらった。
一括見積もりサイトの盲点──「便利」の裏に潜む問題
次に試したのは、テレビCMでもおなじみの「ミツモア」という一括見積もりサービスだった。5社に同時に見積もりを依頼できるという効率性に期待を寄せた。
案の定、登録後すぐに5社からレスポンスがあった。しかし、どの業者も「現地を見てから」「鍵の種類によって変わる」という曖昧な回答ばかり。より具体的な見積もりを求めて、ドアの全体写真、鍵穴のアップ写真、現在の鍵の写真を撮影し、詳細情報とともに送付した。