すると興味深い現象が起きた。写真を送った時点で、5社のうち2社から連絡が途絶えたのだ。おそらく、思っていたより儲からない作業だと判断したのだろう。

残りの3社も、決して満足のいく対応ではなかった。1社は見積もり金額が予算オーバー。残り2社に「取り外し費用、鍵本体料金、取り付け費用を含めた総額を教えてください」と具体的に質問したが、なぜか明確な回答を避け続ける。「現地で確認してから」という定型句の繰り返しだった。

この経験で気づいたのは、一括見積もりサイトの構造的な問題だった。業者は案件を獲得するために登録しているが、必ずしも質の高いサービスを提供する意思があるわけではない。消費者にとって「便利」に見えるシステムが、実は業者の質を保証するものではないという現実を突きつけられた。

偶然の出会いが導いた、真摯な業者との接触

一括見積もりサイトと並行して、個別に何社かの業者にも連絡を取っていた。その中で、際立って対応が素晴らしい会社があった。見積もりサイトには掲載されておらず、Google検索で詳細に探したところで見つけた小さな会社だった。

最初の電話での印象が良かったのは、担当者が作業内容について詳しく説明してくれたことだった。「まずドアノブを専用工具で取り外し、新しい鍵に交換して取り付けます。作業時間は30分程度を予定しています」と、曖昧さのない回答。そして何より、最初から総額を明示してくれた。

しかし、この会社を選ぶ最終的な決め手となったのは、ホームページに掲載されていた社長のメッセージだった。

「なお、弊社と同じくらいの金額設定をしている鍵屋さんもあります。同じく企業努力によってやられているところもあるかとは思いますが、まったくもって安くご提供できる理由が違うところもございます。と言いますのも、ほぼ全ての商品をとても安く取り扱っているように見せながら(弊社より)、実際にはある特定の商品のみを取り扱い(アルファFBロック)、その商品を強引に勧めてくる悪質なやり方をしているところがあるのです」