「病気と老化に怯えて生きていくのも辛いし、暇なので早くお迎えが来てほしい」自分はこういった老人をそこそこ見てきたので、「自由時間だけはある状態」をあまり幸福には思わないのだ。
人生の本当の豊かさは「経験」
では、人生を本当の意味で豊かにしてくれるものとは何か。それは間違いなく「経験値」である。
「DIE WITH ZERO」という書籍でも語られているように、経験値は資産のように数値化も換金もできない。だが、時間の経過とともに複利のように価値を増していく。
若い頃のがむしゃらな努力、恐怖を乗り越えて挑んだチャレンジ、そして数々の失敗の果てに得た成功体験は、年齢を重ねるほどに深みを増し、幾度となく人生を温めてくれる。
そして何より、経験値を積むのに巨額の資金も生まれ持った才能も必要ない。必要なのは、ただ一つ。「リスクを取って行動する勇気」である。
お金で買える「体験」には限界がある
「体験格差」という言葉が叫ばれるようになったが、筆者自身、かつて貧乏旅行を繰り返していた立場から見れば、それはやや本質ではないと思っている。
若い頃の筆者は、青春18きっぷ、夜行バス、車中泊といった手段で旅を重ねていた。だが、今になって振り返ると、創意工夫の末にたどり着いた小さな発見や、独特の苦労も含めて、むしろ当時の旅の方がずっと楽しかったと感じる瞬間が多い。
五つ星ホテルやラグジュアリーレストランの体験も悪くはないが、数度経験すれば期待値が形成され、それを超える感動は得づらくなる。やがて、感情が動かなくなるのだ。
東京に住んだ人が東京タワーというランドマークを経験しないように、「その気になればいつでもできる」と思うと体験は先送りになる。そして先送りされたまま、気づけば何も経験していないまま人生が過ぎていく。経験値を積むうえで本当に必要なのは、お金ではなく「リスクテイク」と「行動力」である。