黒坂岳央です。

一般的に「人生の勝ち組」とは、経済的・時間的自由を手にした者を指す。確かに、多くの資産を築き、ラグジュアリーな生活を送る人々は、憧れの対象のように見える。

しかし、それは本当に幸せな姿だろうか。ネット上には、宝くじの高額当選や持ち株の急騰などで、突如として経済的・時間的自由を手に入れたものの、逆に生きがいを失い、奈落の底へと落ちていった人々が語る実話が存在する。

筆者自身は大富豪ではないが、ある程度経済的に困らず、自由な時間も得てきた中で確信している。それは本当の勝ち組とは「経験値を持つ者」ということだ。

残された人生もひたすらお金を増やすより、経験値を増やすことにこだわって生きていきたい。

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お金では買えない「人生経験」

節約と労働、そして一定の金融知識と時間さえあれば、自由な人生は決して夢物語ではない。特にインデックス投資や副業が広く普及した現代では、堅実な人間であれば、数千万円から1億円規模の資産を築くことも不可能ではなくなった。その道筋はきわめて明快である。

だが自分自身の経験から強く感じるのことは、「形だけFIREを達成しても、真の幸福にはつながらない」という事だ。

たとえば、節約と貯金で1億円の資産を築いたとしても、4%ルールに従って年間400万円を取り崩すという生活では、多くの人が「資産が減るのが怖い」と感じ、結局は極端な節制生活に陥ってしまう。

FIREまでの道のりは細く、FIRE達成後はさらに細くなってしまうなら多くの人が憧れるほどの価値がそこにあるのか?ということは疑問だ。確かにFIREすれば「自由な時間」だけは潤沢にある。問題はその潤沢の時間を使って何をするか?である。

資産残高ばかりを気にして、「人生を味わう」ことが抜け落ちてしまえば、本末転倒だ。突飛な例を出さずとも、定年退職後に年金生活を送っている人々が、本当に「経済的・時間的自由を手にしたから幸せ」と言えるのだろうか?