この理由について研究者は「炭酸塩補償深度(CCD)」が関係していることを見出しています。
CCDとは、海中において炭酸塩化合物(おもに炭酸カルシウム)が存在しうる最大深度のことです。
これより浅い場所には炭酸カルシウムが豊富に存在するので、生物たちはそれを材料に硬い殻を作ることができます。
しかしCCDより深い場所では炭酸カルシウムがないため、生物は殻を作れず、グニャグニャした軟体動物が支配的になっていたのです。
CCDの深さは場所の環境要因によって変わりますが、クラリオン・クリッパートン海域(CCZ)では、だいたい水深4400メートル辺りであると推定されました。
チームは今回の新たな知見が深海の生態系の保護活動に役立つと見ています。
特にクラリオン・クリッパートン海域には金属を豊富に含む岩石が膨大に蓄積しており、鉱山会社にとっては魅力的な場所です。
しかし無闇に海底を掘削すれば、海中の化学物質のバランスが崩れてしまい、それぞれの環境に適応した生物たちにダメージを与えるかもしれません。
深海探査はこうした”見えないライン”を考慮しながら、生物たちの悪影響とならないよう慎重に行わなければならないでしょう。
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参考文献
A Hidden Line Deep in The Ocean Divides Animals Into Two Camps
https://www.sciencealert.com/a-hidden-line-deep-in-the-ocean-divides-animals-into-two-camps
元論文
Carbonate compensation depth drives abyssal biogeography in the northeast Pacific
https://doi.org/10.1038/s41559-023-02122-9
ライター
大石航樹: 愛媛県生まれ。大学で福岡に移り、大学院ではフランス哲学を学びました。 他に、生物学や歴史学が好きで、本サイトでは主に、動植物や歴史・考古学系の記事を担当しています。 趣味は映画鑑賞で、月に30〜40本観ることも。