その後、講義の内容についてのクイズと、学習中の音に気付いていたかどうか、またどれだけ音で気が散ったのかに関するアンケートに回答しています。
実験の結果、背景音が聞こえていた参加者は、音は聞こえていたと報告し、どちらのグループも同程度に気が散っていたと評価しました。
しかし背景音に対する評価は同じだったにも関わらず、咳や鼻をすする音が聞こえていた参加者では、無音の状態だった参加者と比べ、クイズの成績が約17%低下したのです。
なぜこのようなことが起こったのでしょうか。
この現象の背後には、行動免疫システムという人間が持つ本能的なメカニズムが関係していると考えられます。
私たちは、病気の兆候を示す音に無意識に注意を向け、潜在的な脅威を評価しようとします。
これにより、学習に割ける認知リソースが減少し、新しい情報の記憶や理解が妨げられる可能性があるのです。
はるか昔、私たちの祖先は、自然の中で生き残るために、周囲のあらゆる情報に敏感でなければなりませんでした。
特に、病原体や危険を示す兆候は、生命に直結する重要なサインになります。
そんな太古からの「生存本能」が、現代社会、たとえば私たちが何かを学ぼうとしている瞬間に、予期せぬ形で影響を及ぼしているのです。
では、カフェで集中して作業しているときや会社のオフィスで企画書を作成しているときに、隣から咳やくしゃみ、鼻をすする音が聞こえてきた場合、どのように対処すれば良いのでしょうか。
その場を離れるのが一番簡単な方法ですが、ノイズキャンセリングのイヤホンを使う、ホワイトノイズや自然音など別の音でマスキングする、または短時間の休憩を取るほうが良いでしょう。
これらの対策で、集中力を維持し、効率的に作業を進められるはずです。
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参考文献
These common sounds can impair your learning, according to new psychology research
https://www.psypost.org/these-common-sounds-can-impair-your-learning-according-to-new-psychology-research/