アメリカや中国でさえ、世界的な価値観や連帯よりも、自国の経済的・政治的利益を重視するようになり、同盟の優先順位も曖昧になりつつある。国際秩序は、より柔軟で、より不安定な「多極化構造」へと移行している。
本書の意義
『地政学理論で読む多極化する世界』は、表層的なニュースの羅列では捉えきれない国際秩序の大変動を、理論的かつ戦略的に整理する一冊である。とくに、BRICSの拡大や脱ドル化の動き、トランプ現象といった一見バラバラに見える出来事を、「多極化」というキーワードで一貫して分析している点が秀逸だ。
また、「英米系」と「大陸系」という二つの地政学理論の視点を導入することで、単なる国際関係論にとどまらない深みを持たせており、現代世界を読み解く上で極めて有益な視座を提供している。
国際政治や地政学に関心を持つ読者だけでなく、現代世界の構造的変化に関心があるすべての人にとって、重要な知見を与えてくれる良書である。
地政学理論で読む多極化する世界:トランプとBRICSの挑戦