具体的には、標準体重のグループは1時間当たり6g、ふとり気味のグループは7g、肥満のグループは9gとなりました。
普通サイズのビール缶1本(350ml)にはおよそ14gのアルコールが含まれているため、標準体型の女性の場合には全て分解するのに2~3時間かかることになります。
この結果を一見すると、増えた脂肪の量だけアルコール分解能力が上がっているようにみえます。
しかし積み重ねられた研究では、アルコールの分解は主に脂肪組織ではなく肝臓で行われていることが示されており、結果と矛盾するように思えます。
そこで次に研究者たちは、被験者たちの除脂肪体重(脂肪量を除いた体重)を調べてみました。
するとBMIが多い人ほど除脂肪体重が大きいことが判明。
またアルコール分解速度との関係を調べたところ、除脂肪体重が及ぼす影響は72%に達していることが判明します。
つまりアルコール分解速度と本当に関連していたのは除脂肪体重だったのです。
ただ除脂肪体重といっても、骨や筋肉、神経、消化管など含まれる要素は多数に上ります。
そこで研究者たちが着目したのが肝臓でした。
最新の研究では除脂肪体重と肝臓の脂肪部分を除いた容積「除脂肪肝臓容積」に明白な相関関係があることが報告されています。
この除脂肪肝臓容積は肝臓の中でアルコールの分解を行っている部分の総量と一致しています。
そのため研究者たちは、BMIが大きい人がアルコールの分解速度が速くみえるのは、BMIが大きい人は除脂肪体重も大きく、結果的に大きな肝臓を持つ傾向があるためだと結論しています。
さらに減量手術を受けた女性のアルコール分解速度を調べたところ、非常に興味深い結果が得られました。
これまで胃切所や胃バイパスのような減量手術を受けると、アルコール分解速度が遅くなることが報告されていました。
しかし除脂肪体重を介して再度分析すると、減量手術そのものはアルコール分解速度を落とさず、減量手術後に除脂肪体重が減少したときのみアルコール分解速度が落ちていることが明らかになりました。