24年10月上場からわずか10か月で倒産したオルツ。私には2つのがっかりがあります。1つはクローン技術では日本の先端を走っていたと報道されてきた点でそれは本当だったのか、という疑念です。もう1つは創業者の米倉千貴氏の兄を知っていて、彼ともオルツの話を何度もしたことがあり、応援をしていたのです。兄は上場前、一時、オルツの副社長にも就任していましたが辞めてしまい、自分の世界をエンジョイすることにしたようです。今ではバンクーバーの奥地に引っ込んでしまっています。
オルツは何を売っていたのか、といえばクローン技術ではなく、議事録ソフトの販売でした。「えっ?」と思うでしょう。私もそう思いました。社員20名程度でクローン技術を開発しながら経費を賄うにはよほどの出資者がいないと無理なのです。だけどオルツは上場という道を選んだのです。出資という点ではよさそうに聞こえます。あるいは社会的信用もできそうです。しかし、上場は制約が多いのもまた事実なのです。圧倒的技術の開発はふんだんな予算を使える環境ではないと今の時代は勝てないのです。マンション一室で雑魚寝しながら頑張ったというのは堀江貴文氏のライブドアの創業話を含め日本の象徴的美的苦労話なのですが、私から言わせればそんな90年代00年代の話、今さら何を、ということになります。
それにしても売り上げの90%が架空というのは実態がほぼなかったとも言ってよいのでしょう。ではクローンの話は何だったのか、日経も何度か同社を取り上げてきましたが、取材記者もけむに巻いたということなのでしょうか?そうだとすれば米倉氏は相当の名役者であったと言えましょう。日本には新興企業が多すぎ、一時期東証は上場会社数を「産めよ増やせよ」的な経営方針にしていた時期もあり、質の悪い会社に化粧を塗りたくり、きれいな服を着せて「どう、私、将来性あるのよ、株、買わない?」と謎の誘惑に太鼓判を押していたようなもの。東証改革はもう少し、シビアにやらないと真の意味の投資家が日本から本当に逃げてしまいます。