作られた人工細胞(PTO-GUVと呼ばれます)は小さなガラス板の上に固定され、数日間にわたって顕微鏡を使って観察されました。

その結果、多くの人工細胞でKaiBの蛍光の強さが約24時間周期で規則正しく変動し、確かに時計が正しく機能していることが確認されました。

言い換えれば、小さな袋の中に閉じ込められたタンパク質が、自分自身で周期的なリズムを作り出しているのです。

しかし、興味深いことに、すべての人工細胞がこのようにうまく時計として機能したわけではありませんでした。

Kaiタンパク質の量が少ない場合や、人工細胞のサイズが特に小さい場合には、途中でリズムが消えてしまったり、最初から振動が見られないケースも多く観察されました。

このことから、時計としての機能を維持するには、ある一定以上のタンパク質量と細胞サイズが必要だとわかったのです。

実際に観察された人工細胞は、大きく分けて2種類に分類できました。

一方はきちんとリズムを刻み続ける「時計として動く人工細胞」、もう一方は「最初から全く動かない、または途中で止まってしまう人工細胞」です。

研究チームはこの現象を詳しく調べるため、「時計の忠実度(fidelity)」という指標を使いました。

忠実度は、人工細胞全体のうち、正しくリズムを刻めている細胞がどのくらいの割合いるかを表します。

例えば、忠実度が1なら全ての人工細胞が振動していることを示し、忠実度が0ならばどの細胞も振動していないことを意味します。

忠実度を計算した結果、人工細胞が小さくなったり、中のタンパク質の量が少なくなったりするほど、忠実度が明確に低下することがわかりました。

反対に、タンパク質の量が多くなればなるほど、時計として安定して機能する人工細胞の割合が高くなりました。

さらに振動が持続した細胞に関しては、その周期(約24時間)は細胞のサイズやタンパク質量にほぼ左右されないことも明らかになりました。