このジャガイモには、野生種も含めて100種以上の近縁種が存在しており、これらを総称して「Petota(ペトタ)」と呼んでいます。

しかし興味深いことに、ジャガイモに最も近い親戚であるトマト属(Solanum亜属)や、Etuberosum(エツベロスム)属には、このジャガイモの特徴である塊茎を持つ種はありません。

【コラム】ジャガイモに「花と実と種」は存在する?

ジャガイモと言えば、多くの人が地下にある「塊茎(かいけい)」という栄養を貯めた部分を思い浮かべます。この塊茎は、実はジャガイモの茎が太ったもの。芽が出てくる部分(芽目)があって、それを切り分けて土に植えることで、新しいジャガイモが生えてきます。これが一般的に知られるジャガイモの栽培方法です。ところが、ジャガイモにもちゃんと花が咲き、種ができることをご存じでしょうか。地上部分に目を向けると、春から夏にかけて白や紫色をした可愛らしい星型の花が咲きます。その花の形は、同じナス科に属するトマトの花にとてもよく似ています。実際、ジャガイモの花はナス科特有の形をしていて、中心には鮮やかな黄色の雄しべが並び、その姿はトマトやナスを思わせます。そして、花が咲いた後には小さな実ができます。この実は熟してもあまり目立つ色にはならず、緑色のトマトのような見た目をしています。しかし、ジャガイモの実をトマト感覚で口にしてはいけません。ジャガイモの実には毒性のあるソラニンという成分が多く含まれているため、決して食用にはなりません。かつてこの実を食べて中毒を起こした例もあるため注意が必要です。ジャガイモの実の中には、本来の植物の繁殖に使われる「種」が含まれています。この種は非常に小さく、トマトやピーマンの種に似ています。実際、この小さな種を播くことで新たなジャガイモの苗を育てることが可能ですが、私たちが普段食べている栽培用のジャガイモの多くは種から育てることはあまりありません。その理由は、種から育てる方法だと品質や収穫量にばらつきが出やすいためです。その代わりに、ジャガイモの塊茎自体を「種芋」として使うのが一般的になりました。これは種から育てるよりも、収穫量や品質が安定するためです。ただし、この方法だと病気やウイルスが塊茎を通して次世代へと受け継がれやすくなります。そのため近年では、ウイルスなどの病気を避けるため、ジャガイモの種子(本来の種)を用いて無病の苗を育てる方法(TPS法:True Potato Seed)も改めて注目されています。ジャガイモの花や種は普段あまり気にされないかもしれませんが、その背景にはジャガイモの進化と栽培の歴史が深く絡んでいるのです。次にジャガイモを食べるときは、ぜひその地上に咲く花や小さな種にも思いを馳せてみてください。きっと、ジャガイモに対する見方が少し変わるかもしれません。