内部構造は、光が通りやすいように設計されており、必要な栄養分が毛細管現象によって素材全体に行き渡るよう工夫されています。
研究の目的は、「二重の炭素固定」の実現です。
これは、シアノバクテリアが成長する過程でCO2を有機物(バイオマス)として取り込む可逆的な固定と、光合成により周囲の化学環境を変化させ、炭酸カルシウムや炭酸マグネシウムといった鉱物としてCO2を不可逆的に固定する、2つのメカニズムを指します。
これにより、短期的にも長期的にもCO2を封じ込めることができる、非常に効率の良い炭素吸収システムが実現されました。
3mの柱が最大18kgの二酸化炭素を吸収!建築物が“呼吸”する未来へ

この生きた建築材料は、どれほどの炭素吸収力を持つのでしょうか?
実験によれば、光合成を続けることで、1gあたり30日間で約2.2mgのCO2を吸収でき、さらに400日間の長期実験では最大26mg/gのCO2を鉱物として固定できたといいます。
これは一般的な藻類や木材系素材に比べても高性能であり、再生コンクリートによるCO2固定(約7mg/g)よりもはるかに効率的です。
また、素材の内部で生じる鉱物の蓄積によって剛性(硬さ)や強度も向上していき、建材としての安定性も高まっていきます。
さらに研究チームはこの技術を建築レベルにスケールアップし、2025年のヴェネツィア・ビエンナーレで実際のインスタレーションを公開しました。
「Picoplanktonics」と題された作品では、3m級の“生きた柱”が展示され、1本あたり年間最大18kgのCO2を吸収可能であると試算されています。
これは樹齢20年の松の木とほぼ同等の吸収力です。
