真夏のエアコンが設置されていない場所では、扇風機は「最後の命綱」のように思えるかもしれません。
しかし、扇風機がかえって健康に悪影響を及ぼす可能性があることが、新たな研究で明らかになりました。
この研究は、オーストラリアのシドニー大学、モナシュ大学、アデレード大学、そしてカナダのモントリオール心臓研究所による共同プロジェクトで、高齢者における扇風機使用の安全性について科学的な検証が行われました。
その結果、乾燥した極端な高温環境では逆に扇風機が体温を上昇させ、熱中症のリスクを高める可能性があることが判明しました。
研究成果は2025年7月29日付の『JAMA Network Open』誌で発表されました。
目次
- 「扇風機」は本当に体温を下げてくれるのか?
- 乾燥した高温環境下では、「扇風機が害をもたらす」かもしれない
「扇風機」は本当に体温を下げてくれるのか?
毎年夏になると、熱中症による救急搬送や死亡のニュースが後を絶ちません。
特に高齢者は体温調節機能が低下しているため、若年者に比べて熱の影響を受けやすいとされています。
こうしたトラブルを防ぐのは冷房設備です。
そして冷房設備がない家庭や施設では、扇風機が頼みの綱となることもあります。
室内で風を受けることで体感温度を下げられると信じられており、「風があれば涼しい」という直感的な印象があるため、多くの人が積極的に使用しています。
しかし米国CDC(疾病予防管理センター)は、気温が32℃を超える環境では扇風機の使用が体温上昇を招くとして、風を自分に向けないよう注意を促しています。

その一方で、扇風機の効果に関する科学的根拠は限定的で、実際にどういった条件で安全なのかははっきりしていませんでした。
そこで今回の研究チームは、高齢者における扇風機の効果とリスクを、気温や湿度の条件を変えながら詳細に調査しました。