ここまで紹介してきた海の構造に関する知識は、魚の飼育においても大変重要です。
先に記したように、魚はこの複雑な「水」を体内に直接取り入れて呼吸をするため、水は魚の体に大きく影響します。すなわち、水の性質によって魚の体調は大きく左右されていると言えます。
「黒潮」と「親潮」もそれぞれ水の特性は全く異なっており、一概に同じ海流と呼べるものではありません。その違いにより、黒潮の影響を受ける海域の生き物の種類や自然環境、親潮の影響を受ける海域の生き物の種類や自然環境もそれぞれ異なります。
魚にとっての快適な環境は、海流含む自然環境の影響、そして水そのものの特性によって決まります。魚を飼育する際はこうした様々な環境要因と照らし合わせて考えていく必要があると言えます。
沖縄にメジナがいないのか考察
海域によって海の特性が違う、生息する魚も違うというのはなんとなく分かると思います。サンゴ礁などで見られるカクレクマノミを南極海の海水で育てろと言われても、無理なのは一目瞭然です。
しかし、私たちが考えている以上に海の特性は複雑なのだと考えさせられる事例があります。
琉球列島では稀な魚<メジナ>
釣り人に人気の「メジナ」という魚。日本にはメジナ・クロメジナ・オキメジナという3種が生息しています。

メジナとオキメジナは台湾で、クロメジナは香港で見られます。メジナの仲間は本州でも普通に見られる魚です。
釣り人の中には、関東近海でもメジナを釣ったことがあるという人もいるのではないでしょうか。このことから、てっきり日本各地のどこでも見られるものだと思われがちです。

しかし、実のところメジナはいずれも琉球列島では稀な魚なのです。全くいないということはありませんが、本州や台湾と比べると極端に数が減ります。
琉球列島で見られないということは、メジナは高水温が苦手なのかというと、先に書いたように彼らは日本近海より海水温が高い台湾や香港でも見られます。決して温暖な気候が苦手と言うわけでもなさそうです。