組織では、最高の将軍になれる逸材が、その才能を発揮できず組織に埋もれることがよくあります。組織の環境が、才能を活かすことがあれば、殺すこともあるのです。
では、ビジネスの現場ではどうすればいいのでしょうか?
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まず、自分たちが思い込みで人材を判断していないか、振り返ることです。
人は無意識に、肩書きや経歴で判断します。「この人は部長だから」「この分野の専門家だから」と考えるわけですね。でも、これらは過去の実績です。これだけで判断していると、「最高の将軍になれる」という隠れた資質は絶対に発掘できません。
「学歴、役職、年次で判断する」のは効率的に見えますが、実は大損しているということです。「学歴、役職、年次で人をラベリングしない」という姿勢が必要です。
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声の大小で判断しないことも重要です。
「これをやりたい! 私はこんな力がある」と大声で主張する人は目立ちます。多くの組織は「やる気」を重視するので、こんな人はチャンスを得ます。
しかし全体で見ると、才能を持つ人の中で、大声で主張できる人は必ずしも多くありません。むしろ「内向的リーダー」や「自己主張しない才能」も多いのです。組織は多様な才能を発掘して、埋もれた才能を活かすような風土が必要です。
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そこでマネジャーにとって重要な仕事が、「未発掘の才能を見つけること」です。
具体的には、社員の行動や考え方を観察したり、その人が何が好きで、何をやりたいかを把握して、必要であれば最適な仕事に配置転換することです。
私が日本IBMで人材育成の責任者を務めることになったきっかけも、人事部長が私が社外で開催していた朝活に参加して「永井さんは人を育てるのが好きだし上手い」と見抜いたことがきっかけでした。「人材育成の責任者をやらないか?」と言われたときは想像もしていなかった仕事ですが、実際に人材育成をやってみると、マーケティングに続く第2の天職になりました。