ニカイア公会議には具体的には、アリウス派とアタナシウス派の対立を解消する目的があった。アタナシウス派とは、アレクサンドリアのアタナシウスの指導の下、父なる神と子なる神であるキリストが同質(ホモウシオス)であると主張した派だ。この考え方は、後に三位一体説として確立され、キリスト教の正統教義とされた。

一方、アリウス派は、キリストは神の被造物であり、「イエスの神性」を否定していた。アリウス派は当時、最も影響力のあるキリスト教運動であり、アレクサンドリアの長老アリウス(260年頃から327年)の信奉者たちの信仰だった。アリウスにとって、「父なる神」と「子なる神」との関係は、子を至高の神ではなく被造物として捉える、段階的な関係として理解する方が、より説得力があり、聖書にも合致していると理解していた。

最終的には「イエスの神性」を否定するアリウス派が異端とされ、アタナシウス派の「ニカイア信条」が採択された。しかし、アタナシウスの説は正統とされたが、その後もアリウス派との対立は続いた。

教会全体が、イエス・キリストの「完全な神性」を強調する信仰告白に同意する一方、キリストを「ある種の神聖な存在、あるいは神の領域に属する存在」と定義するだけで、神自身とは定義しないアリウス派の教義は退けられた。そして、聖霊を神格における第三の「位格」とする「三位一体」の教義は、数十年後のコンスタンティノープル公会議(381年)によって定着していく。

参考までに、ニカイア公会議のテーマ、「イエス・キリストは神か」を聖書に基づいて少し検証してみる。

ピリボがイエスに、神を見せてくださいと言った時、イエスはピリボに「私を見た者は、父を見たのである。どうして、わたしたちに父を示して欲しいと言うのか。私が父におり、父が私におられることを信じないのか」(「ヨハネによる福音書」第14章8節~10節)と答えている。別の個所では、「アブラハムの生まれる前から私(イエス)は、いるのである」と述べている。「イエスが神」と解釈できる聖句だ。