日本の参院選への論評は米国の大手紙ウォールストリート・ジャーナルにも掲載された。7月25日の同紙に載ったジョセフ・スターバーグ氏による長文の評論だった。同氏は同紙で国際的な政治や経済の課題を専門とするベテランのコラムニストである。

このコラム評論の主見出しは「日本の有権者はもうたくさんだ、という態度を見せた」という主旨だった。脇見出しには「問題は日本国民がどれほど長く『沈滞』(malaise)を許容し続けるのかだった。今回の選挙は『もう許せない』という答えを出した」と記されていた。

Malaise(マレイズ)というのはジミー・カーター政権時代によく使われた言葉だった。政治や経済の沈滞、その結果としての国民の憂鬱という意味である。日本でも国民全体の沈鬱こそが自民党の石破政権への大敗北をもたらしたというのがこのコラム記事の最大ポイントだった。

ただしこのコラム記事も「もし唯一の勝者をあげるとすれば、それは石破政権の票を大量に奪った右派の複数の抗議政党だった」と付記していた。右派の抗議政党といえば、まずは参政党、そして獲得議席こそ少ないが日本保守党、さらには国民民主党や日本維新の会も決して左翼ではないからこのカテゴリーに入るかもしれない。今回の選挙では左派の後退が明確だった。共産党の議席減、社民党のほぼ消滅、なお最大野党とされる立憲民主党も伸び悩みだった。

スターバーグ記者のコラムもこの「抗議政党」のなかでは参政党の議席の激増を重視して、自民党の失政と石破首相の不人気でできた政治的な不安の空間を埋める役割を果たした、と述べていた。日本ではいま在住外国人の人数もインフレ率の数字も米欧諸国にくらべれば、ずっと低いが、それでもなお自民党・公明党の連立政権下の諸政策が現実にきちんと対処できなかったことが現体制への不満や怒りを高め、ついに石破自民党への「ノー」という意思表示になったのだ、と結論していた。