しかし、アルミニウム20は瞬時に崩壊してしまうため、存在を確認するためには、崩壊した直後に放出される粒子をすばやく検出し、その軌跡を詳細に記録する必要があります。
そこで、研究チームは「フラグメント・セパレーター」という大型の装置を用いて、この難しい課題に取り組みました。
この装置は、発生した多数の核破片の中から特定の原子核だけを選び出すことができます。
具体的には、粒子が高速で飛行する途中に磁場をかけることで、それぞれの粒子の質量や電荷に応じて異なる方向に曲げられる性質を利用しています。
これにより、非常に短時間しか存在しないアルミニウム20の軌跡と崩壊の様子を正確に追跡することが可能になりました。
そして精密な装置を用いた解析の結果、アルミニウム20の崩壊がこれまでに知られている崩壊現象とは異なる、非常に珍しいパターンであることが明らかになりました。

まずアルミニウム20の原子核は、崩壊の第一段階として陽子を1つ放出します。
すると、この陽子放出により陽子の数が1つ減り、「マグネシウム19」という新たな原子核へと変化します。
このように、陽子が核から飛び出すと、元素そのものが別の元素へと変わってしまうのです。
さらに驚くべきことに、このマグネシウム19という娘核もまた非常に不安定であり、そのまますぐに陽子を2つ同時に放出してしまいます。
この2つの陽子放出により、「ネオン17」という、さらに別の元素の原子核が生じます。
つまり、アルミニウム20はまず1つの陽子を放出してマグネシウム19となり、その直後にマグネシウム19が2つの陽子を同時に放出するという、二段階の連鎖的な崩壊を起こすことが観測されたのです。
これまで原子核の崩壊現象として知られていたのは、1つの原子核が単独で崩壊するパターンでしたが、このように親核(最初の原子核)が崩壊した後にできた娘核がさらに続けて崩壊する「連続陽子放出(2段階の陽子放射性崩壊)」は、今回の観測が史上初めてのことでした。