ロシア外務省に勤務していた外交官ボリス・ボンダレフ氏は2022年、プーチン大統領のウクライナ戦争に抗議して西側に亡命し、昨年、プーチン大統領のウクライナ戦争の目的などを解説した著書「Im Ministerium der Lugen」(嘘の省で)を出版した。同氏は「欧州ではプーチン大統領に反対する人がいかに少ないかに驚かされる。西側諸国が何をしようとウクライナは破滅する運命にある、戦争におけるロシアの勝利は避けられない、と考えている西側指導者が多い。ロシアに少し勝たせて、ウクライナの一部を併合すれば、プーチンは黙るだろう、というのだ。2008年には、プーチンはアブハジアと南オセチアだけを欲しがり、あとは黙るだろうという声が聞こえた。2014年には、プーチンはクリミアを併合し、ドンバスを掌握した。アンゲラ・メルケル(元独首相)のような西側諸国の政治家たちは、最初は見て見ぬふりをし、それからプーチンはそれ以上は進まないだろう、我々が彼のガスを買うからいいだろうと述べていた。しかし、2022年には、周知の通り、プーチンはさらに踏み込み、ウクライナ全土を征服しようとしている。驚くべきことに、ここにきても依然、『彼にウクライナ東部を渡せば、あとは黙るだろう」という空気は広がっていることだ」と警告を発している。
同氏によると、「ロシアの攻撃を受けた場合、バルト諸国は他のNATO加盟国全員の防衛に頼ることはできない。たとえそうする義務があるとしてもだ。プーチンは、世界が長らく見てきたハイブリッドなパターンに従い、一歩一歩、この目標に向かって進んでいくだろう。経済的、政治的、武力的な挑発、あるいは人為的に作り出された不安を通じて、バルト諸国の不安定化を試みるだろう。彼は秩序の回復と『ロシア系少数民族の保護』を要求し、密かに事態をさらにエスカレートさせる。プーチン大統領はその後、全てを解決すべく軍隊を派遣するだろう。NATOの介入を阻止するため、クレムリンの指導者は核兵器の使用も辞さないだろう」というのだ(「亡命露外交官『西側はプーチンを倒せ』」2025年7月18日参考)。