対照的に、白い囲みのミナミオオガシラでは、下顎の少し下までしか皮膚が伸びていません。

人間は上顎から下顎までの間に食物が入るようになっており、開口面積は顎の可動域に制限されます。

一般的なヘビは顎の可動域を広くしたり、下顎が左右に開いてより大きな開口面積を確保します。

そしてビルマニシキヘビは、この左右に開く下顎骨の間の皮膚が他種よりさらに大きく伸びるようになっており、上顎と下顎の間につくられる開口面積と同じくらいの面積を追加で確保できるのです。

ジェイン氏も、「ビルマニシキヘビの総合開口面積の40%以上は、下顎の間にある皮膚が伸びることでもたらされる」と指摘しています。

では実際にビルマニシキヘビは、ミナミオオガシラと比較して6倍も大きな獲物を食べているのでしょうか?

ヘビは大きな獲物よりも小さな獲物を好む

研究者たちはこれまでに、ビルマニシキヘビの胃の中からシカのひづめや他の大型動物の残骸を発見してきました。

大人のオジロジカを吐き出している様子が写真に収められたこともあります。

野生のビルマニシキヘビが大人のオジロジカを吐き出している
野生のビルマニシキヘビが大人のオジロジカを吐き出している / Credit:Bruce Jayne(University of Cincinnati)_Pythons are true choke artists(2022)

また幼いニシキヘビが、自分の体重の60%に該当する約3kgのシカの赤ちゃんを丸呑みしたという記録も残っています。

しかし、巨大な獲物を丸呑みする能力をもっていることと、巨大な獲物を好むかどうかは別問題です。

実際、ビルマニシキヘビを含む多くのヘビは、丸呑みできる限界サイズよりもずっと小さな獲物を好んで食べるようです。

そのためビルマニシキヘビも、他と比べて4~6倍も大きな獲物をいつも食べているわけではないでしょう。

最後にジェイソン氏は、「ビルマニシキヘビが人間を襲うことはほとんどない」と指摘し、私たちを安心させてくれています。