調べられたのは、58カ国の4年生(平均9.5歳)と8年生(平均13.5歳)の生徒500万人以上のデータです。
そして、以下に示すような数学(算数)問題の題材と、正解率、子供たちの家庭環境などの条件の関係について調べました。
- お金
- 食べ物
- 社会的関係(社会的なかかわりのこと。例:競争、協力など)
- 中立的な内容(例:ボタン、カエルなど)
- 数学表記(例:5631 + 286 = など)
すると、興味深いことに特定の問題文の出し方に対して、家庭の所得が有意に関連性を持つと示されたのです。
貧困層の学生は食べ物やお金を扱った数学問題の得点が低い
分析の結果、所得の違いが、特定の題材の問題の正解率に大きな影響を与えると分かりました。
最も所得が低い層の子供たちは、最も所得が高い層の子供たちに比べて、お金、食べ物、社会的関係の題材で、正解率が下がりました。
なんと、その題材が扱われているというだけで、4年生で18%、8年生で16%も成績が下がったのです。
そして成績の差が最も顕著に表れたのは食べ物に関する問題であり、低所得者層の子供たちの得点は22%も低くなりました。
「カエルが5匹いて……」という問題を「ドーナツが5個あって……」という問題に変更するだけで、一部の子供たちの得点が22%も下がるというのだから驚きです。

ちなみに最も影響が少なかったのは社会的関係の題材でしたが、それでも12%の違いが生じました。
では、どうしてこのような違いが生じたのでしょうか。
今回の研究は統計調査に留まるため、実際の因果関係についてはまだ明確ではありませんが、研究チームは、以下のような原因を推測しています。
1つは、低所得層の子供では、お金や食べ物を題材にした実世界の経験が、他の子と比べて不足しており、日常生活での経験が豊富な学生との間で問題の理解力に対して差が生まれやすいということ。