日本には義務教育があり、子供たちは家庭環境や収入の違いにとらわれず、教育を受けることができます。
低所得者層だとしても意欲的に学ぶなら、教育の益を十分に得て、成績を高めることができるはずです。
しかし、こうした考えは現実的ではないのかもしれません。
オランダのマーストリヒト大学(Maastricht University)経営経済学部に所属するマルジョリン・マスク氏ら研究チームによると、貧困層の子供(学生)は、数学(算数)の問題で例文にお金や食べ物を使うと成績が下がるのだという。
貧困層の子供たちは、お金や食べ物に対して何らかの偏見を抱くようになっており、それらが成績に悪影響を及ぼしている可能性がある。
研究の詳細は、2024年3月15日付の学術誌『npj Science of Learning』に掲載されました。
目次
- 算数の問題は例文の内容で得点率が異なる?
- 貧困層の学生は食べ物やお金を扱った数学問題の得点が低い
算数の問題は例文の内容で得点率が異なる?
算数のテストでは、次のような問題が出されることがあります。
あめが15こあります。5人に同じ数ずつくばると、1人分は何こになりますか。
身近な物(食べ物、植物、文房具など)やストーリーを用いて、数学的な問題文を作るのは教科書では当たり前となっています。

このような例文を用いる理由は、抽象的な数学の概念について、子供が簡単にイメージできるようにするためです。
しかし、上述したような問題については、あめを分け合ったり、買い物を自分でするなど実世界での経験が乏しい子供だとイメージが難しくなる可能性があります。
では、これら実世界の経験に関わる問題文では、その内容によって子供たちのテストの結果そのものに影響が及ぶことはあるのでしょうか。
マスク氏ら研究チームは、この点を調べるため、2007年と2011年の国際数学・理科教育動向調査(TIMSS:小・中学生を対象とした国際比較教育調査)のデータを用いて調査を行いました。