2. 「それくらいじゃブル・ムースは殺せんよ」演説原稿が救った命
** (ジョン・シュランク vs セオドア・ルーズベルト元大統領、1912年) **

「ルーズベルトの3期目を阻止せよ」――故マッキンリー大統領の亡霊にそう囁かれたと信じ込んだ男がいた。ジョン・シュランクだ。彼はルーズベルトを追いかけ、ウィスコンシン州ミルウォーキーでついにその機会を掴む。
シュランクはコルト社製.38口径リボルバーを抜き、ルーズベルトの胸をめがけて発砲した。しかし、弾丸は思わぬ障害物に阻まれる。分厚い50ページの演説原稿の束を貫通し、さらにその下にあった鉄製の眼鏡ケースを粉砕。肉体に達する頃には、その勢いはすっかり失われていた。
胸から血を流しながらも、ルーズベルトは屈しなかった。彼は聴衆に向かってこう言い放ち、1時間半の演説をやり遂げたのだ。
「これくらいで、ブル・ムース(彼の愛称)は殺せんよ」
弾丸は危険すぎるという医師の判断で、彼の胸に生涯留まることになった。一方、シュランクは精神異常と診断され、施設に収容された。
3. 「えっと、弾は…?」マンソン信奉者の初歩的すぎるミス
** (リネット・“スクイーキー”・フロム vs ジェラルド・フォード大統領、1975年) **

カルト指導者チャールズ・マンソンの熱心な信奉者、リネット・“スクイーキー”・フロム。彼女は1975年9月、カリフォルニア州サクラメントでフォード大統領に接近した。
群衆の中から現れた彼女は、大統領に向かってコルト.45口径のピストルを突きつける。そして引き金を引いた――が、何も起こらなかった。なんと彼女、ピストルの薬室に弾を込めるのを忘れていたのだ。
大統領が冷静にその場を離れる中、フロムは呆然と立ち尽くし、すぐにシークレットサービスに取り押さえられた。彼女は後に「大統領を殺す気はなく、環境問題への注意を喚起したかっただけ」と供述した。終身刑を言い渡された彼女は、約35年服役し、2009年に釈放されている。