半年後の追跡調査により、研究チームは各動機タイプと、実際に交際関係が始まったかどうかの関係を分析しました。

その結果、「恋人がいないと恥ずかしい」「恋愛経験がないと自分に問題があるように思える」といった否定的イントロジェクション動機を持つ人ほど、半年後に恋人ができている割合が有意に低いことが明らかになりました。

一方で、「恋愛が楽しい」「恋愛は自分の人生にとって意味がある」と感じていた人、つまり内発的動機や同一化動機を持っていた人たちは、交際に至っている割合が比較的高い傾向にあったのです。

興味深いのは、「親や友人の期待に応えるため」といった外的動機を持つ人たちでは、否定的イントロジェクション動機を持つ人ほど交際の成功との明確な関連が見られなかったことです。

研究チームは、こうした外的な動機は行動への意欲としては弱い一方で、強い自己否定感を伴わないため、恋愛の結果にはあまり影響を及ぼさない“中立的”な動機になっているのではないかと考えています。

また研究者を驚かせたのは、恋愛に無関心だった「無動機」の人たちでも、一定の割合で交際に至っていたことです。

これはたとえ恋愛に興味がなく、積極的に相手を求めなかったとしても、構えすぎず自然に関係が始まる可能性は一定割合で起こり得ることを示唆しています。

いずれにせよ、「恋人がいないと恥ずかしい」「恋人がいないと自分に欠陥があるように思える」から恋愛したいという人たちは、他の動機を持つ人より恋人が出来づらいというのは、今回の研究の非常に興味深い発見です。

研究チームは、否定的イントロジェクション動機を持つ人が交際に至りにくい理由について、いくつかの心理的メカニズムを挙げています。

否定的イントロジェクション動機を持つ人は、他人に拒絶されることに対して過敏になりやすく、相手のちょっとした反応にも強く傷ついてしまう傾向があります。そのため、やりとりがぎこちなくなったり、自信のなさが前面に出てしまったりして、関係を自然に育てることが難しくなってしまうのです。