実験後にモーズリー氏は、「質問された時、嘘をつくことさえ思いつかなかった」と説明しています。

この実験からは、チオペンタールが判断力を低下させることで自白剤としていくらか利用できる可能性が示されています。

信頼性の低い「現実の自白剤」たち

脳の働きを抑制する薬を投与すると、副産物として自白剤のような作用が現れることも
脳の働きを抑制する薬を投与すると、副産物として自白剤のような作用が現れることも / Credit:Canva

他にも自白剤は存在しています。

例えば、「スコポラミン」と呼ばれる神経伝達物質を阻害する薬も、自白剤と呼ばれてきました。

ヒトを対象としたスコポラミン投与試験では、記憶障害や認知障害を引き起こすことが確認されています。

そのため「自白させると同時にその記憶を曖昧にし、目覚めた後に自分が何を言ったのか覚えていない」という効果が期待されました。

ただし結局、認知機能が低下した人が正確な情報を提供できるかは疑問のままです。

また「アモバルビタール」も中枢神経全体を抑制する催眠・鎮静剤ですが、自白剤として使用されたことがあったようです。

第二次世界大戦中には兵士たちの抗不安薬として広く使用されたようですが、運動機能や認知機能に障害を与えたり、強い中毒性を持っていたりすることから利用されなくなりました。

しかも投与後に「事実とは異なる記憶を形成する」ことがあったため、悪評高い自白剤として有名です。

エチルアルコール(つまり酒)も、ある意味、自白剤の効果があると言える
エチルアルコール(つまり酒)も、ある意味、自白剤の効果があると言える / Credit:Canva

最後に挙げられる自白剤は、「エチルアルコール(エタノール)」です。つまりお酒ですね。

人々は、2000年前からエチルアルコールに舌を緩める効果があることを知っており、それは現在の私たちも同様です。

「お酒の席であれば、本音を引き出しやすくなる」というのは周知の事実であり、いくらか自白剤の効果が見られます。

ただし、酔っぱらったおじさんたちの「俺は昔、地元では敵なしだった」みたいな、大きく誇張された自慢話や創作話に繋がることも多く、信頼性は高くありません