たとえるなら、近視の人間が「少しぼやけているくらいの世界がちょうどいい」と感じてしまうのと似ている。度の強い眼鏡をかけると、世界がくっきり見えるはずなのに「細かく見えすぎて違和感がある」と拒否反応を起こすようなものである。
歪んだ世界観に慣れてしまうと、自分と異なる意見や反論は「攻撃」として感じられるようになる。SNSではあちこちで差別・弾圧・迫害が起きているのも認知の歪みを持つものによる攻撃である。
見え方が強く歪むと、誰も寄り付かなくなる。結果、誰からも認知の歪みを指摘されなくなり、ますます閉じた世界に引きこもってしまう。こうなると人生のあらゆる側面で損失が生まれる。人間関係はギクシャクし、キャリアの選択肢は狭まり、精神的にも不安定さを抱えやすくなるのだ。
今こそ、若いうちから認知を整えるべき理由
かつてはこうした認知の歪みは、中高年の問題とされていた。若者は社会人経験を通じて上司や先輩から厳しいフィードバックを受けることで、少しずつ矯正されていった。だが、現代は状況が変わった。上司が間違いを指摘するだけでも「パワハラ」と騒がれる時代になったことで、職場や教育現場でも“誰も注意されない社会”が生まれつつある。
この結果、若い世代でも認知の歪みを抱えたまま年を重ねてしまうリスクが高まっている。一般的に年齢を重ねるほど、人は変化を拒むようになるので、若いうちにフィードバックを受けて社会性や論理性を磨いておかなければ、後年に大きな社会的・経済的代償を払うことになるのである。
居心地の良い場所、馴染み深い人間関係ばかりに留まると、短期的には楽だが、長期的には自分を孤立と損失に導いてしまう。
AIから指摘を受ける
だが絶望するにはまだ早い。現代にはAIという非常に優れたツールがある。AIは人間関係に配慮しない。「自分の考えは妥当か?」と問いかけると、主観を交えずに論理的にフィードバックを返してくれる。ある意味、最も無慈悲で最も公平な“鏡”である。