では、キラキラネームはいつから増えてきたのでしょうか?

荻原氏ら研究チームは、過去から現在に至るまでの新生児の名前を調査することで、キラキラネームの増加傾向を明らかにしようとしました。

まず日本各地の地方自治体から、新生児の名前が記載された広報誌を収集。

そこに含まれていた1979~2018年に生まれた新生児の名前5万8485件を分析したのです。

そして、いわゆるキラキラネームと言える「自治体内で1年間に他の新生児の名前と重複していない名前」の割合を算出し、時間の経過に伴う変化も分析しました。

加えて、同様の方法で3年単位の分析も実施しました。

その結果、どちらの分析においても、個性的な名前の割合が増加し続けていると判明。

しかもその増加は、40年前の1980年代から見られていたのです。

キラキラネームという言葉が広まる30年前には、既に個性的な名前が増加していた
キラキラネームという言葉が広まる30年前には、既に個性的な名前が増加していた / Credit:荻原祐二(東京理科大学)_個性的な名前は1980年代から40年間にわたって増加している~地方自治体の広報誌に掲載された新生児の名前を分析~(2022)

つまりキラキラネームの存在自体は、この言葉が定着する少なくとも30年以上も前から増えていたというわけです。

荻原氏の先行研究(2021)では、2004年の時点でキラキラネームが増加していたことがすでに示されていましたが、実際はもっと昔から増加していたようです。

ちなみに1993年には、親が実子に「悪魔(あくま)」と命名しようとして、行政が受理を拒否するという騒動がありました。

当時は衝撃的な出来事として大きな話題を呼びましたが、もしかしたらその背後にも「個性的な名前を付けたい親の増加」があったのかもしれません。

実際、「悪魔」ほどではないにせよ、他の誰もが名付けないような「キラキラネーム」は、下のグラフからも分かるように、当時まさに増加中だったのです。

(黒線)1年間で重複しなかった名前の割合, (緑線)3年間で重複しなかった名前の割合
(黒線)1年間で重複しなかった名前の割合, (緑線)3年間で重複しなかった名前の割合 / Credit:荻原祐二(東京理科大学)ら, Current Research in Ecological and Social Psychology(2022)