国際経済学の教科書に書いてあるように

経常収支=貿易収支+サービス収支+所得収支(海外純投資)

なので、日本の対米投資5500億ドルは、アメリカにとっては所得収支の赤字になる。期限は切ってないが、もし1年間に日本企業が対米投資を80兆円増やすと、アメリカの対日赤字は年間5500億ドル増えるのだ。

GDPにカウントされるのは経常収支なので企業収益は減る。「日本企業の投資収益の90%をアメリカ企業が取る」などということはありえない。もしそんな協定を政府が結んだら、日本企業は投資しない。

政府は民間投資をコントロールできない

対米投資についていろいろな項目があがっているが、政府がコントロールできるのは防衛省の調達ぐらいで、それもボーイングを優遇することはできない。ロッキード事件以来、防衛省の調達は厳格な競争入札になっているからだ。

他方「民間がいま計画している投資がトランプ大統領の任期内に80兆円になるだろう」という程度のゆるい約束なら、ソフトバンクグループのAI投資は4年間で77兆円だから、これを対米投資にカウントすればいい。ただし日本政府は責任をもたない。

石破首相を解任して関税協定を白紙に戻せ

そもそも関税を上げて貿易赤字を減らす協定がWTO違反だが、もし日本がその要求に応じるなら、トランプがたびたび要求したように農産物を全面自由化すべきだった。

ところが石破首相は「農業を犠牲にしない」と公言し、今回の協定でもミニマムアクセス枠を変えないでアメリカ分を75%増やすという。そんなことはできない。MA枠は77万トンとWTOで決まっており、特定の国を増やして他の国を減らすことはできないのだ。