鋼鉄であっても簡単に捻じ曲がるほどの力がかかる水深に人が潜ると考えると、技術の進歩を感じるとともに怖さも感じますね(鉄をもつぶす怪力 ~水圧~-NHK)。
暗く冷たい深海環境
次に立ちはだかるのは温度です。深海は水温が非常に低く、1000m地点で2~4℃ほど。水圧に耐えられるように作られた潜水艦には暖房器具がないため、乗組員にとっても過酷な環境になります。
そして最後は暗闇です。太陽の光が届かないため、潜水艇の照らせる範囲だけが視界になります。限られた視界と酸素で広い海を探索するのは至難の業。何度も潜航を繰り返すことで、少しずつ探索を進めるしかないことも、調査が進まない理由のひとつです。
コスト
また、深海へ潜る潜水艇を製造するには大きなコストがかかります。
1989年につくられた、深海6500mまで潜ることのできる有人潜水調査船「しんかい6500」は2024年に設計上の寿命を迎えるそうですが、後継機をつくる技術者は引退しており、しんかい6500を構成するチタン製の耐圧殻をつくる設備もなくなっているそう。
「ロストテクノロジー」だとして時折SNSを騒がせますが、今後の有人潜水艇についても目が離せません。
研究者たちのさまざまな工夫
思うように探索が進まない深海に挑戦するため、研究者はさまざまな工夫をしています。海中で使用できない電波の代わりに音波を使って海底の地形を調べ、通信や画像の記録などを行っています。
有人探索以外にも、近年は水中ドローンの技術も発達してきました。有線操縦になるためひとつのエリアの調査には時間がかかりますが、調査の手助けとして役立っています。
深海には未だ謎が多い
深海に住む魚たちは、浮袋の空気の代わりに自分の体を油で満たしたり、体を柔らかくすることで水圧に耐えているのではないか、といったことがわかりはじめています。
しかし、深層や超深層に生息するカニやナマコの仲間たちはどのように水圧に耐えているのか、謎めいた部分も多く残されているのです。