2025年のニッセイ基礎研究所のレポートでは、若年層の消費が「メリハリ型」に移行しているとされる。外食や旅行を極端に節約する一方、推し活や限定グッズには青天井のように出費する。この価値観は、「コスパが合わなければ働かない」「残業は非効率」といった職場行動にも繋がりやすい。

加えて、New York Postによれば、Z世代は年間平均49本もの金融アドバイスをSNSから得ているという。中でもTikTokなどの”FinTok”では「副業でFIRE」「仮想通貨で一発逆転」といった短期成功の事例がバズりやすい。

このようにアルゴリズム主導の情報環境では、地道な努力よりも目立つ成功事例が拡散されやすく、合理的に見えて実は“短期的な自己最適化”に偏った意思決定が常態化する。

ソーシャルフィルタリングされた情報は「大衆にウケが良い」という点でスコアリングされているにすぎず、自分自身の価値観や本音、人生の優先度などは一切無視されている。そのため、大衆向け最適解をトレースすることが効率が良いように見え、その実、自分の本音にアクセスがない「作られた需要喚起」に過ぎない。

結果として、「働く=自己実現の手段」ではなく、「働く=時間対効果が低い行為」として捉えられる風潮が一部で強まっているという仮説を立てることができるのではないだろうか。

「若年プレミアム」の終焉か?

少子化による人手不足は、企業側に「若者を甘やかす構造」を生んだ。初任給30万円といった好待遇、成果に関係なく与えられるインセンティブなどがその例だ。

人によっては「あまり根拠のない厚遇がかえって彼らを勘違いさせ、身勝手な行動になり得る」と考える人もいる。確かに長年働いたベテラン社員とあまり変わらないような給与を、入社時にもらえる道理は見出しづらいと考える人がいても不思議ではない。

しかし、世界は変わりつつある。OECDは「生成AIによって、職務の70%が影響を受ける地域も出る」と警告。また、経済同友会は2035年に外国人労働者が国内労働の1割を占めると試算している。