●この記事のポイント ・「IVS2025」の注目コンテンツである7つのテーマゾーン。そのなかで起業直後のフェーズにフォーカスした「IVSシード」は、特に投資家にとって関心が高いエリアといえる。 ・その「IVSシード」をプロデュースするのは、若きベンチャーキャピタリストだ。起業家支援に熱意を持ち、近く寄り添う姿勢を見せる田中洸輝氏のIVSにかける想いの原点を探る。
日本最大級のスタートアップカンファレンス「IVS2025」が京都で7月に開催される。今年は7つのテーマゾーンが設けられ、なかでも注目を集めるのが、起業前後のフェーズにある“シード”層にフォーカスした「IVSシード」ステージだ。起業家の卵からアーリーステージの起業家までを対象に、濃密なセッションと偶発的な出会いを提供するこの場を統括するのが、インキュベイトファンド所属の若きベンチャーキャピタリスト・田中洸輝氏だ。家庭環境から受けた起業家への思い、そして「人を残すことこそが最上位の価値」という信念を胸に、田中氏はシード期の起業家支援に情熱を注ぐ。IVSの意義とシードステージの真価を探る。
目次
- 起業家の孤独を知る者として
- 苦難の時期こそ、伴走の価値が問われる
- シードに特化したIVSステージを創る意味
- 日本の“課題”を“価値”に変える場へ
- 出会いが生むイノベーションの連鎖
- 「準備された偶然」に飛び込め
起業家の孤独を知る者として
「父も母も、それぞれ会社を経営していました。順風満帆な時もあれば、本当に苦しい時期もありました。うまくいっている時は人が集まってくるけれど、つらい時に支えて寄り添ってくれる人はとても少ない。経営者はとても孤独に見えました。」
田中洸輝氏がベンチャーキャピタルの道を選んだ原点には、幼少期のそんな家庭環境がある。2018年に立教大学を卒業後、東京海上日動火災保険、アクセンチュアを経て、2022年にインキュベイトファンドに参画。シード・プレシードといった創業初期のスタートアップを中心に、投資とハンズオン支援に奔走してきた。
学生時代に最も影響を受けた言葉は、明治から昭和初期にかけて活躍した政治家、後藤新平の「財を残すは下、事業を残すは中、人を残すを上とする」というもの。
「現在30歳の僕は“失われた30年”と呼ばれた時代と共に生きてきました。間もなく自分にも子供ができることもあり、自分の子供には”失われた○○年”とは聞かせたくない。日本経済や社会に大きなインパクトを与える挑戦を志す人の背中を押し、諦めたくないけど心が折れそうになっている時の最後の支えになれるか。それが僕の使命だと考えています」