歴史の片隅に消えた「純粋な謎」

 1897年の夏になると、あれほど全米を騒がせた飛行船は、まるで蜃気楼のように忽然と姿を消しました。残骸も、設計図も、そして正体も、何一つ見つかることはありませんでした。

 この事件は、ロズウェル事件のように政府の陰謀論に発展することも、エリア51のように神話化することもありませんでした。人々の熱狂が冷めると共に、まるで忘れ去られるように歴史の片隅へと追いやられてしまったのです。

 だからこそ、「謎の飛行船」事件は、現代のUFO神話とは異なる、ある種の「純粋な謎」として私たちの前に横たわっています。それは、技術への憧れと社会の不安、そしてメディアの熱狂が入り混じった、19世紀末という時代そのものが生み出した、壮大な幻だったのかもしれません。あるいは、本当に誰にも知られることのなかった天才が、夜空を舞台に一世一代の飛行を披露していたのでしょうか。その答えは、今もなお歴史の霧の中に閉ざされています。

参考 Mystery airship(Wikipedia) Anomalien.com Plane & Pilot Magazine ほか

文=ヨミノ・ユナ

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