アンソロピック判決と異なり、同判事は「ダウンロードと訓練」をまとめて一つの変容的使用とみなした。利益追求や悪意ある取得が問題となり得ることは認めつつも、著者側の証拠が不十分であることを指摘した。
市場への影響に関しても、具体的な実証データがなかったため、判断を避けた。ただし、判事は「LLM訓練ほど市場に競合作品を氾濫させ得る著作物利用は他に存在しない」とも述べており、説得力ある証拠があれば異なる結論もあり得たことを示唆している。
判事は、アンソロピック判決にも言及しつつ、「オールサップ判事は変容性に重きを置きすぎて、市場への影響という最も重要な要素を軽視した」と批判した。このように第4要素の市場への影響についてもアンソロピック判決とは対照的な解釈を示した。
また、「本判決の影響は限定的であり、原告側が誤った主張をし、適切な証拠構築を怠ったにすぎない」と付言した。
今後の見通し
アンソロピック判決については、とりあえず海賊版の永久保存についての地裁での事実審理の行方が注目される。
また、両判決は同じ地裁で結論は同じでも、異なる理由にもとづく判断であること、メタ判決は判事も指摘するように敵失的な要因も加わっていることなどから、判決を不服とする著作権者(原告)が上訴する可能性は高い。冒頭紹介した非生成AIのロイター判決もAI企業(被告)が上訴。デラウェア連邦地裁を管轄する第3巡回区連邦控訴裁判所は先月、上訴を受理している。
さらに、他の生成AIの著作権侵害訴訟の行方も目が離せない。「生成AI『ただ乗り』批判のNYタイムズはなぜアマゾンと提携したのか?」で紹介したNYタイムズ 対 オープンAI・マイクロソフト事件のように、メディア業界とIT業界の巨人のガチンコ勝負となった訴訟も控えている。この事件も含め40件に上る訴訟の中には最高裁まで争われ争われる可能性のある訴訟もあり、戦いはまだ始まったばかりである。