【6】這い回る生肉は“肉の操り人形師”の仕業

 カウンターの上を、まるで生き物のように這いずる一枚の生肉。この気味の悪いシーンも、実は肉にワイヤーを取り付け、セットの下からスタッフが操っていただけ。その日の彼の仕事は、文字通り「ミート・パペッティア(肉の操り人形師)」だった。最もシンプルな仕掛けが、時に最も効果的な恐怖を生むという好例である。

【7】MGMのライオンが吠えるイースターエッグ

 この映画の制作会社はMGM。監督たちは、映画の最も心臓に悪いジャンプスケアの瞬間に、MGMの象徴であるライオンの咆哮を効果音としてこっそり紛れ込ませた。また、あるグロテスクなシーンで顔の肉を引き裂く手は、実はスピルバーグ本人の手だったという。遊び心あふれる粋な隠し要素だ。

【8】家の崩壊シーンは精巧なミニチュア模型

 クライマックスで家が異次元に吸い込まれ、崩壊する圧巻のシーン。これは高さ約1.2メートルの精巧な家のミニチュア模型を制作し、それを破壊して撮影された。掃除機のような発生装置でブラックホール効果を生み出し、撮影された壮大な崩壊シーンは、フィルム上ではわずか2秒の出来事だった。

【9】霊能者役の女優は、本物の霊能者だった

 印象的な霊能者タンギナを演じた女優ゼルダ・ルビンスタイン。彼女は、私生活でも本物の霊能力を持っていたと主張していた。彼女は撮影中、監督のトビー・フーパーの集中力を「感じ取ることができた」と語るなど、役柄と現実がシンクロした、まさにハマり役だった。

【10】監督は誰だ?今なお続くスピルバーグvsフーパー論争

 『ポルターガイスト』最大の謎、それは「一体誰が本当の監督なのか?」という問題だ。公式クレジットは『悪魔のいけにえ』のトビー・フーパーだが、現場ではスティーヴン・スピルバーグが実質的な監督として采配を振るっていたと、多くの関係者が証言している。映画の作風もフーパーよりスピルバーグのそれに近く、この「監督論争」は、映画の最も根強いミステリーとして今も語り継がれている。

 これらのエピソードが示すのは、CG技術が未熟だった時代に、いかに作り手たちが情熱と創意工夫を凝らして「本物の恐怖」を追求したかという証でもある。アナログなトリック、危険と隣り合わせのスタント、そして常識外れの決断。そのすべてが奇跡的に結実し、映画史に残る傑作が誕生したのだ。スクリーンの向こう側で繰り広げられた“もう一つの物語”を知ることで、『ポルターガイスト』という作品は、より一層深く、そして恐ろしく我々の心に迫ってくる。

知ればもっと面白い(そして怖い)『ポルターガイスト』に隠された10の制作秘話。ピエロ人形の恐怖から、一発撮りの天才的トリックまでの画像2
(画像=画像は「Amazon」より)

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